集中治療室では医療機器が発する電子音が常に聞こえていた。規則的で柔らかく、場の秩序は、この音によって保たれているようにさえ思え、或いは異次元への誘いにも感じられるのだった。そんなある日のことだ。おぼろげな意識の中で、私は「世界」の佇まいに触れているような心持ちになった。脳裏には、フラットに在る事象のすべてが、ゆらぎのない秩序の元で、弛むことなく連鎖を続ける光景が広がっていた。
【本書は、撮影者である三島正により顔料インクを用いたインクジェットプリンターで刷られ、PUR製本で合本にしたものです(ブックカバーは除く)】
B5判、164ページ、白黒、第1版第1刷:限定150部、発行所:TMG House、ブックデザイン:小山弘、製本所:入船製本工房